個人事業主ならまず加入すべきである必須の節税手段「小規模企業共済」。
でも、個人事業主にとってのステップアップである法人化の際、その手段は解約しなければいけないのか?
継続はできないのか?
継続できるとして何かデメリットはないのか?
すっごく気になったので、とことん調べてみました。
法人化後に解約すべき?継続すべき?どうすれば最良か
結論から言うと、個人事業主から法人の役員として加入し直す手続きは必要だけど、法人化しても継続して加入することはできます。
というか、個人事業主として小規模企業共済に加入している状態で法人化した場合は、ほぼほぼ以下3つの方法のどれかを選ぶ事になりそうです。
- 法人役員になった後に解約する
- 法人役員にならずに解約する
- 法人の役員として継続加入する
ということで、以下それぞれを詳しく解説してみます。
法人役員になった後に解約する
個人事業主から小規模企業(正社員が5人以下の会社、20人以下の製造業など)として法人成りして、その役員となった場合に解約すると、解約手当金として、掛けた金額の80%~※を返却してもらえます。※平成22年12月末以前に加入の場合は満額~の受取可
つまり元本割れです。
しかも、一時所得となるため、所得税をがっつり持っていかれちゃいます。
例えば、以下のように月額7万円で5年間共済費を払っていた場合は、その年の所得が143万円も増えちゃいます(^^A
例)月額7万円で5年間の場合
掛け金 = 7万 × 48ヶ月 = 420万円
解約手当金 = 420万円 × 0.8 = 336万円
一時所得の所得対象額 = (336万円 - 特別控除額50万円) ÷ 2 = 143万円
ということで、元本割れに加えて所得増による課税額の増加となってしまい、今までの節税効果を考慮しても損をします!
できればこの解約手当金をもらう方法は避けたいところです。
法人役員にならずに解約する
役員は他者に任せて、自分は、登記に乗らない会長や監査、社員やパート等になれば、準共済金として掛け金と同額からの解約金を受け取ることができます。(平成23年1月以降に加入の場合)
(例)掛金月額1万円で、平成16年4月以降に加入された場合
掛金納付月数 | 掛金残高 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 |
---|---|---|---|---|
5年 | 600,000円 | 621,400円 | 614,600円 | 600,000円 |
10年 | 1,200,000円 | 1,290,600円 | 1,260,800円 | 1,200,000円 |
15年 | 1,800,000円 | 2,011,000円 | 1,940,400円 | 1,800,000円 |
20年 | 2,400,000円 | 2,786,400円 | 2,658,800円 | 2,419,500円 |
30年 | 3,600,000円 | 4,348,000円 | 4,211,800円 | 3,832,740円 |
また、この時の解約金は、退職所得扱いになるため、分離課税となり、課税金額も少なくて済みます。(退職所得の課税計算方法参照)
何か良さそうな感じはしますが、せっかく作成する法人の役員になれないのはシャクですし、法人化後の役員報酬に対する節税手段の1つを捨てる事になるので、資金に困っている等の事情がない限りは、この方法もあまりおすすめはしません。
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法人の役員として継続加入する
会社役員として継続加入する場合は、個人事業主の廃業届と登記簿謄本、納付月数通算申出書兼契約申込書(同一人通算用)を法人化後1年以内に提出すれば、会社役員として、小規模企業共済に継続加入する事ができます。
この方法をとれば、個人事業主の時の掛金納付月数と掛け金額の引き継ぎができます。
また、解約の際も、役員を辞めれば、課税金額の少ない退職所得として解約金を受け取る事ができます。
ちなみに退職所得として受け取る場合の税の計算方法は以下になります。
退職所得の課税計算方法
小規模企業共済からの解約金が退職所得扱いになる場合、受け取った金額から退職金控除額を引いて、それを半分にした金額に対して源泉徴収が行なわれます。
具体例をあげると、以下のように月額7万円で20年間共済費を払っていた場合、約1,600万円を確定申告なしでもらえる計算になります。
(4年以内に倒産防止共済などで退職所得をもらっている場合、もうちょっと計算がややこしくなります)
(例)月額7万円で、ぴったり20年間支払っていた場合に受け取れる金額
掛け金 = 7万円 × 240ヶ月 = 1,680万円
退職金の課税対象額 = (1680万円 - 退職所得控除額800万円) ÷ 2 = 440万円
440万円の源泉徴収額 = 約80万円(超ざっくりw)
総受取額 = 1,680万円 - 80万円 = 1,600万円
退職所得控除額
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数-20年) |
ちなみにここで言う源泉徴収とは、小規模企業共済側が、上記例でいうと課税対象である440万円の税金(分離課税)を、あなたやあなたの法人に変わって納税してくれたことを言います。
また一括で受け取る以外にも、10年か15年で分割でもらう方法(雑所得になる)、一括と分割の併用などの受け取り方法もありますが、割愛させてもらいます。
一応分割だと、共済側にお金が残った状態になるので、その分利息が増えることとなり、若干ながら受取額が多くなるので、興味のある方は調べてみても良いかもですね。
とうことで、法人化後の節税を考えると、この法人化後も継続して加入する方法が一番おすすめです。
しかし、この方法をとっても、実はデメリットが存在します。
以下そのデメリットを記載しておきます。
法人役員として継続加入した際のデメリット
結論から言うと、実質的に個人事業主よりも受け取れる金額が減る可能性が高いということが一番、というか唯一のデメリットです。
個人事業主なら、廃業もしくは配偶者や子どもに事業を全譲渡すれば「共済金A」という一番利率が高い解約金のもらい方ができたのですが、法人の場合、「共済金A」にするには法人の解散一択しかありません。
しかも、そのワンランク下の「共済金B」で解約金をもらうにしても、満65歳以上か病気や怪我で役員を退任するという条件なので、若く健康なうちに早めに退職金を受け取りたい場合は、更に下のランクの「準共済金」として受け取る必要が出てきます。
この受け取り方なら、役員から会長や一般社員になったり、退職すれば、元本保証で退職金が受け取れるのですが、ハッキリ言って他の受け取り方法よりも受け取れる金額が少ないです。
(例)掛金月額1万円で、平成16年4月以降に加入された場合
掛金納付月数 | 掛金残高 | 共済金A | 共済金B | 準共済金 |
---|---|---|---|---|
5年 | 600,000円 | 621,400円 | 614,600円 | 600,000円 |
10年 | 1,200,000円 | 1,290,600円 | 1,260,800円 | 1,200,000円 |
15年 | 1,800,000円 | 2,011,000円 | 1,940,400円 | 1,800,000円 |
20年 | 2,400,000円 | 2,786,400円 | 2,658,800円 | 2,419,500円 |
30年 | 3,600,000円 | 4,348,000円 | 4,211,800円 | 3,832,740円 |
個人事業主と同じ利率で解約金を受け取る事が非常に難しいというこの事実は、法人化後に小規模企業共済を継続する上で一番のデメリットと言っても過言ではないと思います。
まとめ
法人化してその役員となった場合、小規模企業共済は個人事業主の時の掛金納付月数と掛け金額の引き継ぎができ、その方法をとる事が、節税面、解約時の受取金額面ともに一番良いでしょう。
ただし、個人事業主の時よりも、解約時に受け取れる金額を最大化する為の条件が厳しくなるので、その事を十分に理解した上で法人化・共済への継続加入をする必要はあると思います。
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